心配性

 私は病気に関して、異様に心配性である。これまでの21年の人生の間、数々の病気を疑っては病院に駆け込んだものだ。

 小学生の時、さくらももこの「盲腸の朝」というまんがを読み、そのころから盲腸という病気に対する恐怖感を持つようになった。小学校高学年の頃のある日、右下腹部がちくりと痛んだことがあり、意識すればするほどその「ちくり」という痛みが気になってきた。 「きっと盲腸に違いない!」と恐れおののき、恐怖のあまり母親に泣いて訴え、 近所の内科医のところへ駆け込んだ。結果、「異常なし」。

 中学生の時から癌が恐くなった。中学1年の時、足に癌ができて亡くなった女の子の話を聞いてからだ。 「自分と同じくらいの子でも癌になるんだ!」と、常に癌に対しておびえるようになった。
 そんな中学1年のある日、ふと、すねのところを見ると、直径2センチほどのしこりがあるではないか!!・・・どうしよう。癌になっちゃったよ。・・・・というところで目が覚めた。すねを見るとつるりとして、しこりはない。あぁ、よかった、夢だったのだ。夢にまで見るほど癌が恐かったらしい。

 高校生の時、夢の中で吐血した。衝撃的な夢だった。気持ち悪くなって戻し、はっと手を見ると、 手は真っ赤、床も血まみれになっていて、それはそれは恐ろしいものだった。夢だとわかった時は本当に ほっとしたものである。おそらく泉麻人のコラムで、高校生の時に胃潰瘍になってタール便を出した経験がある、というのを読んだので胃潰瘍と胃癌を恐れていたのだろう。

 大学1年の夏、血が混じったような褐色の痰が出た。咽頭癌や肺癌を疑ったが、その後その変な色の痰は鼻から のどの方へ落ちたものに由来することに気付き、鼻の奥の癌を疑って、耳鼻咽喉科に行った。レントゲンを 撮った結果、急性の蓄のう症であることが判明し、ほっと胸をなで下ろした。

 大学2年の時、雨の日の夜、スニーカーを履いていたにも関わらず、渋谷の丸井の前の坂で滑って転んで頭を強打した。あまりの痛さに異常を感じて翌日学校を 早退し、時間外なのに脳神経外科に行って無理矢理診察してもらった。CTスキャンを撮ったが、このときも異常なし。

 大学3年の春、お風呂に入った後になんとなくおなかのあたりを触っていたら、右腹部(へそのわきあたり)になんだか固い領域があるのを発見し、驚いた。注意深く触っていくと、かなり大きなしこりのような 感じで、押すと動く、寝てみて触るとなくなっている、というものだった。これが癌だったらえらいことだ、 何年か後には私はこの世にいないだろうと覚悟をして、病院へ行った。
 まず、触診。寝るとしこりがわからなくなるので先生は「しこりはないですよ」と言ったが、念のため 血液検査と超音波検査を受けることに。その結果でも異常は見つからなかったので、先生は「心配ないですよ」と言う。私は「でも、自分で起きてみておなかを触るとやっぱりしこりがあるんですよ。」と訴えた。すると、先生は「じゃ、起きた状態で超音波を当ててみましょうか」と言って、すぐに当ててくれた。
 そして、衝撃的な事実が発覚した。超音波による腹部断面図の皮膚直下に映し出されたものは、なんと 腎臓。生物の図説に出ている腎臓の断面図そっくりな映像が、皮膚の下数センチのところに横たわっているではないか!「あぁ、あなた、自分の腎臓さわって、しこりだと勘違いしてたのよ。」と先生が半ば呆れている。腎臓?腎臓って、そんなに腹側にあるの??その事実に驚いたが、自分の癌の疑いがすっきり晴れて 本当に安心したものだ。大騒ぎしたわりに、この時も結局異常なしだった。

 このほかにも血便を出した夢や、肺のレントゲンを 自分で撮ったら白くて丸い影が映ったという夢など、病気にかかる夢もいくつか見ている。本当に病気にかかることを恐れているのだなぁ、と実感してしまう。でもまぁ、今のところは恐れて心配するだけで、本当に大きな病気にかかっていない自分を幸運だと思う。健康であることは本当にありがたい。(2000.12.14)


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